梅島幼稚園
下町らしさを再編集する緩衝のストラクチャ
住宅密集地に建つ幼稚園の建替計画。 限られた敷地の中で、子どもが伸び伸びと過ごせる環境をつくることが設計上のテーマであった。 そこで、東京の下町らしい「大らかさ」に着目した。 大きな工場や団地はマンションに変わりつつあるが、小さな店舗併用住宅や町工場は開いた構えをもち、街とつかず離れずの関係をもっている。 この大らかさを読み解き、建築として引き継ぐことが、この場所で育つことの心象風景になると考えた。
私たちは、この空間の大らかさの表現として、鉄骨の架構による緩衝のストラクチャを、 諸条件から決まる機能のボリュームに被せ、都市と幼稚園のあいだに中間領域を挿入することを試みた。 建物のファサード側となる運動場からは、連続する鉄骨の架構のなかに、 テラス・屋外階段・屋上庭園が連続して見えることで、建物に街の雰囲気を引き込んだ。 保育室が並ぶ南側は、前面道路に接するため、メッシュフェンスで覆うことで、直接的な視線を緩和しながらも、 天気の変化、太陽や日陰の動きをさりげなく保育室内から感じられる。 2階のテラスは透明なポリカーボネートの屋根に覆われた空間とし、 夏季は葦簀で日差しを遮り、冬季は直射光を採り入れる。 隣地側の保育室と廊下は、勾配天井と屋上の隙間のハイサイドライトから自然光を採り入れることで、 奥まった場所でも十分明るく、かつ中間期には開放して排熱することで、建物全体に熱循環を生み出す。
このように、建築と街のあいだに中間領域的な「緩衝のストラクチャ」を挿入し、 周辺環境との距離感を調整することで、住宅密集地のなかでも伸び伸びとした室内環境をつくり、 各保育室と隣接する都市環境に応じて空間的固有性を浮かび上がらせる。 街並みを形取ったような大らかな構えが、園児の心象風景に残り、 東京の下町で育つことのポテンシャルを浮かび上がらせる。





